チベット仏教は、しばしば「ラマ教」などとも呼ばれ、仏教とはかなり異なった宗教であるように考えられがちである。しかしながら、日本と同じ「大乗仏教」であるだけでなく、実は世界中で最も正統な仏教とさえ言われている。インドと隣接して地理的にも近いことから、かつてのチベットからは多くの僧がインドに赴き、シャカムニ仏(釈尊)の説いたインド仏教の真正な教えを直に学んだ。また、経典である「チベット大蔵経」も、サンスクリット語の原典に極めて忠実に直訳されたものだという。
一方、日本の仏教は、インドから中国を経由して6世紀以降に伝わって来たが、思想や実践などの面で中国の影響を強く受けただけでなく、大半の経文は漢訳の経典から翻訳された。インド仏教はイスラームの侵略によって13世紀の初めには実質的に幕を閉じてしまい、かなり以前より、インドには仏教の原典が残っていない。明治時代の半ばに、あの川口慧海が苦難の旅の末、チベットまで行った理由も、「漢訳の経文より余程確かで、原典に忠実なチベットの経典」を得る事だったのである。
チベット仏教は、その後、チベット全土に止どまらず、モンゴルなどのアジア各地にも拡がり現在では、仏教なしの生活など到底考えられない程までに、チベット人の日常生活に浸透している。

