九寨溝の湖水
チベット族の伝説によると、九寨溝の湖沼は、こうしてできあがった。
その昔、鏡岩と呼ばれる絶壁の界隈には美しい山の妖精が住んでいた。妖精は1000年もの間、悪霊にしつこくつきまとわれながら耐え忍んでいた。これを見かねた山の主の精霊は、魔法の鏡を使って、悪霊を鏡岩の中に永久に封じ込めてしまう。ところが、その戦いの最中に精霊が持っていた魔法の鏡は粉々に割れ、108の破片になって飛び散った。この破片が、九寨溝にある湖沼だという。
こうした伝説に相応しく、九寨溝では数々の神秘的な景観が見られる。例えば、湖に沈む倒木は、石灰の浄化作用と水温の低さのおかげでなかなか腐食せず、水の透明度が高いために水面に浮かんでいるように見える。湖に落ちた枯れ枝には緑のコケが生え、そのコケが成長すると小さな浮島となる。浮島にはほかの生物も根を張り、成長していく。この浮島で名高いのが芳草海である。草でおおわれた小さな浮島が湖面を滑るように移動する姿は、まさに神秘的だ。伝説の魔物が住むと言われるのが、標高3150メートルの長海。九寨溝で最深、最長の湖であり、渓谷の最深部に位置する深い藍色の湖水は、確かに魔物でも生息しそうなたたずまい。ほかにも五彩池、五花海など珠玉のように美しい湖が多数あり、観光には2日はかかる。バス移動ばかりではなく、一部をハイキングする時間が取れれば楽しみも倍加するだろう。

