チベット仏教には数多くの宗教流派がある。7世紀にチベットに伝わった仏教は、長い曲折を経てラマ教となり、政治と合一して、1950年代までチベットほぼ全域を治めてきた。1000余年にわたり数多くの寺院が建てられ、いまでも仏教は大多数のチベット族に信仰され、精神の糧となっている。その中の主な四つの宗派、すなわちニンマ、サキャ、カギュー、カダムを四大宗教流派と呼んでいる。
チベット自治区の首都ラサをはじめ、村落、高山、湖畔、さらにチョモランマ峰の麓に、金色に輝く寺院が多く点在している。寺院は釈迦牟尼像などを祀り、僧侶や信徒が生命哲学と成仏の道を求める場所となっている。土地が広大で人の少ないこの高原で、人が最も多く集まり交流が行なわれるのは寺院とその周辺であり、商業や文化もここから始まる。ラサを訪れた人たちがまず目にするのはポタラ宮であるように、チベットのどこでも最も目につくのは寺院であり、その地方その町のシンボルとなっている。寺院はチベットの建築、絵画、彫刻、音楽を一体化した芸術の宝庫であり、チベットの民間に代々伝わる芸術品、珍宝を蔵し、民族の知恵を凝集している。
ラマ教がなぜチベットで広い影響力をもっているのかは今でも探求されているが、その一つの特色ははっきりしている。一方では僧職者が宗教哲学を一生かけて研究しつづけ、他方では信仰者が生涯マニ車をまわし、経文を唱え、地に伏し、五体投地をくりかえし、祈りつづける‥‥‥これらがチベット宗教の奇観をなし、訪れる人たちはその仏教の形式の威力に驚きを感じる。長年来、ふつうの人びとの生活と心に深くとけ込んだ信仰心として、その善良さ、慈悲深さ、親しさ、そして寛容さがチベット民族の性格の一部をなしている。

