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カザフ族

 


カザフ族は、旧ソ連領中央アジアの独立国カザフスタン共和国の中心的な民族であり、カザフスタン全人口1682万4825人のうち46パーセントを占めている(1999年)。中国領内では、おもに新彊ウイグル自治区のイリカザフ自治州、木塁カザフ自治県、巴里坤カザフ自治県と昌吉回族自治州などの各県に居住するほか、一部は青海省、甘粛省にも居住する。1990年の全国人口調査によれば、中国全土のカザフ族の人口は111万758人である。なお、1997年の新彊ウイグル自治区のカザフ族の人口は、127万800人である。

 カザフ族は、中国では、漢王朝時代に天山山脈の北方うそんに居住していた烏孫に由来するといわれている。直接的には、15世紀に遊牧ウズベク族集団から分離して形成された集団である。当初、現在のカザフスタン東南部に位置するセミレチエ地域に居住していたが、その後、カザフ草原全域に遊牧地域を拡大させた。やがて自らの国家形成をはかり、カザフ・ハン国を創設した。しかしロシア帝国が東方に大々的に領域拡大を実現するに及び、1820年代には、その大部分がロシアの制御下に入った。現在の中国領にカザフ族が居住している歴史的背景としては、清王朝の中央アジア進出があげられよう。18世紀半ば、清王朝がモンゴル系の遊牧勢カシュンガルを平定し、天山山脈北側の地域を征服したあと、一部のカザフ族は清王朝に帰順した。これにより、カザフ族が部分的に西方のカザフ草原から清王朝治下のこの地域に移動し、浸透していったといわれる。カザフ族の居住地域は、ロシアと中国の2つの国家領域にまたがる形になったが、それ以後も、両国の間では、カザフ族同士の国境を越えた移動が行われていた。また大規模な移住も、歴史上特定の条件下で発生してきた。たとえば、スターリン時代のソ連における集団化の時期に、中華民国領への移動が見られた。逆に中華人民共和国成立後には、1962年にソ連との間で発生した、いわゆるイリ事件を契機として、数万人規模のカザフ族が、中国領からソ連領に集団越境したといわれる。この事件を契機として中ソ国境が閉鎖されたが、1980年代に入ると、改革開放政策の導入による国境路や鉄道の開通にともなって、往来が再開された。カザフ族はヒツジとウマの飼育を中心とする遊牧民族として知られ、中国のカザフ族に関していえば、現在でもかなりの部分が、とくに天山山脈およびアルタイ山脈の一帯で遊牧生活を営んでいる。彼らはモンゴル族のゲルとほぼ同型のフェルト張りのユルトと呼ばれるテントに夏の間住んでいる。ユルトには一家族が住み、この家族が7~10戸集合したものをアウルといい、伝統的に遊牧の単位となった。また、彼らの牧畜の技術は非常にすぐれており、肉と毛の両方が利用できるいわゆる新彊細毛ヒツジや、イリウマと呼ばれる名馬を生み出した。主食は季節によって異なっている。すなわち、春季から夏季にかけてはヒツジ肉が主体であるが、秋季から冬季の食料としてはウマの腸に馬肉を詰めて火燻製にしたソーセージが有名である。さらに飲料としてはクミスと呼ばれる馬乳を発酵させた低アルコール分の乳酸飲料をたいへん好む。ウイグル族の主食であるナンも一部の地域では日常的に欠かせない食べ物である。新彊ウイグル自治区の区都ウルムチ市などの都市には、都市化されたカザフ族も見られるが、人口比率からいえば少数派である。都市在住であっても、旧来の出自である部族に対する帰属意識が部分的には残存している。言語はカザフ語で、文字は、カザフスタン領内ではキリル文字を基盤とするものであるのに対し、中国領内ではアラビア文字を変形した字母が用いられている。都市のカザフ族は、漢語とのバイリンガルであることが多い。宗教はスンニー派のイスラム教である。しかし彼らは、伝統的には遊牧を専業としてきたため、モスク(イスラム教寺院)は持たなかった。〔新免〕

*チベット高原の諸民族*
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