怒族

ヌー族は、総人口が2万7140人(1990年)で、おもに怒江リス族自治州の福貢、貢山や、かつての碧江、蘭坪の各県に比較的集中して分布する。トゥルン族と同様、古くからのチベット系先住民族であるが、トゥルン族が主として山間部に居住するのに対して、ヌー族はより開けた河谷低地に住む傾向が見られる。チベット・ビルマ語群に属する四種の言語を、居住地域ごとに使用する。
すなわち、貢山県ではトゥルン語、福貢県ではアノン語、碧江県ではイ語系のヌース語、蘭坪県ではルオロウ語をそれぞれ用い、多くが共住するリス族の言語も理解する。
政治的には、唐・宋王朝時代に南詔王国および大理国の支配下に置かれるなど、長期間、ナシ、リス、ぺー、チベットなど雲南省を主要な居住地域としている有力な民族の支配下にあった。漢族からはかって怒子あるいは路子と呼ばれた。自称はヌス、ノス、アロンなど多種存在する。ヌー族の居住地は、高黎貢山や碧羅雪山などをそれぞれ主峰とする山脈に囲まれた怒江流域の峡谷地帯で、海抜高度1500~2000メートルの山腹や河谷地帯に、チ複数の起一始祖を同じくする集団一を中心とした戸数20~30月ほどの小規模集落を形成する。とくに、碧江の起はそれぞれトラ、サル、クマ、タケ、アサなど固有の動植物を崇拝し、それを集団名とするトーテム集団で、トーテム信仰が見られた。
おもな生業は畑作主体の農業で、トウモロコシやチンクームギ、ソバなどを栽培する。黄色をした中型のウシである黄牛は、耕作用の役牛であるばかりでなく、富の象徴でもあり、土地売買や嫁取りの代価とされた。人々は自然界の精霊を崇拝する。また、災いをもたらす鬼の存在を信じ、大小の事柄全般にわたって、シャーマン(尼璃)による占いと盛大な祭鬼儀式を行う。社会の基本単位は一夫一妻制であるが、結婚に際しては同一氏族の婚姻を禁じている。〔松岡〕
*チベット高原の諸民族*
チベット族,メンバ族,ロッバ族,イ族,チャン族,回族 ,トゥー族,ユーグ族,トンシャン族,サラール族,プミ族,ボゥナン族,カザフ族,ウイグル族,ペー族,ヌー族,ナシ族,モンゴル族,リス族,トゥルン族,ベマチベット人