中国歴史上、最も学問の幅が広い文学家はだれかと尋ねられた場合、蘇軾と答えたら反論する人はいないでしょう。
蘇軾では聞き覚えがないかもしれませんが、蘇東坡と言えば誰もが分かるでしょう。軾は本名で、東坡はその号です。幅が広いばかりか、文学を初めとして書道や絵画、料理、音楽などの諸領域での造詣が深く、いずれも相当の出来栄えです。
唐代の詩人の話をすると李白、杜甫がよく出ますが、宋代一の文人と言ったら何と言っても蘇軾でしょう。詩、詞、散文が全て素晴らしく、それぞれ代表作があります。「盧山の真面目が分からないのはただこの身がこの山におるから」「ただ願わくば人久しく千里蝉娟をともにせん」など有名ですが、よく人々に知られている「赤壁の賦」も蘇先生の作品です。
言い伝えによりますと、まだ名を知られていない蘇軾が国の人材選抜試験で書いた文章を当時の文学界の第一人者、欧陽修が見て「この国にこんな奇才がいては、20年経ったらもう私を知る人はいなくなるだろう」と驚いて慨嘆したそうです。
「三蘇祠」は眉山県の西南部に位置しており三蘇とは三人の蘇さん(蘇軾のほかに父の蘇洵と弟の蘇轍)を意味し、三人とも有名な文学者で「唐宋八大家」に数えられましたので、一家三人を記念する場所として「三蘇祠」をつくり、四川省の省クラス重要文化財となりました。
祠堂は明代に建造した土台の上に清代に増築を行いました。四川風園林の構造は清代の特色です。赤い壁で囲まれ、中に小川が流れており、堂や舘があります。正門に入ると正殿、史料陳列室、啓賢堂などの主体建築が一直線にならんでいます。また全園を流れている小川(人工的水路で、境内で循環水となっている)の上に亭、台、橋、廊などが点在していてます。正門に左右対称に掛けてある対聯(対の柱かけ)、「一門父子三詞客」「千古文章四大家」が目立ちます。「父子三人とも著名な文学者」で「四人の大家の文章が千古流伝」という意味です。
歴史上の四人の大家とは、唐代の韓愈、柳宗元と宋代の欧陽修、蘇軾がそれぞれの時代の文壇をリ-ドしていたことから、四大家と呼ばれているのです。
正殿には三つの塑像があり、真中には蘇洵が、蘇軾と蘇轍はそれぞれ左と右に並んでいます。蘇洵は宋代の有名な散文家で、その散文の特徴としては「空論でなく、実務に打ち込む」ということです。内容は政治、経済から軍事、国境警備まで幅広いものです。当時は少数民族が宋を侵略している時代で、蘇洵が「権書」の中に対応策を提示しました。
今の高等学校の教科書にでている「六国論」という文章も「権書」の中の一つで、戦国時代に登場した秦を始めとする七か国の中の六か国が同じ諸侯国である秦に滅ぼされた原因についての分析を行い、歴史的教訓として団結を強めて、敵に抵抗しなければならないことを述べております。
蘇軾が父子三人の中で最も名前を知られておりますから、よく人々の口にされますが、蘇洵、蘇轍も中国文学史上にとって非常に重要な地位を占めています。蘇轍が得意な分野も散文です。
正殿の後には「木仮山堂」があります。木仮山とは木で作った山で、言い伝えによりますと、これらの変わっている形をしている木々は蘇洵が岷江から拾ってきたもので、それを大事にしていたそうです。後世の人はそれを見て三蘇の不屈な気骨に喩えたと言われています。さらに前に進みますと啓賢堂があります。啓賢堂の中には三蘇についての紹介書類や海外での蘇軾に対する研究情報などが陳列されています。ここを出て左に曲がりますと、右側の水面に蘇軾の石像が立っております。文人服を身に付けている蘇先生はその特別な東坡帽子を被り、石に座っている像です。先生に関連する遺跡名所が全国に多く、塑像も十個所以上ありますが、この像はその中でも一番素晴らしいと言われ、三蘇祠のシンボルとなっております。
石像のそばにある東屋は「披風■」です。■というのは中国の昔の造園建築の一種で、普通の東屋とは少し違います。殆ど水際に位置しており、水や付近にある樹木、花草とともに景観を成しております。この披風■の役目として景観であるだけではなく、それを通して向こう側の「百坡亭」から覗くと蘇軾の像が見えます。これは偶然にできたものではなく、造園技術の一種、「框景」です。つまり遠い景色をより近い門や穴などで規制し、その趣を引き出すというものです。
八風亭はこの小山の上にあります。八風とは蘇軾の読書方法で、本を読む場合、必ず何回に分けて読み、一回毎に一つの面の勉強をし、各方面の知識もたやすく身に付けることが出来るという蘇先生が考えられた方法で、「八面受敵」と言われておりますから,八風亭と名付けられました。伝えによると先生は若い時よくここで読書していたそうですが、本当に草木が生い茂っている、静かで理想的な読書場所です。
小川に沿って回りますとすぐ前は「百坡亭」です。その下にある小川は実は蓮の花の池で、「瑞蓮池」です。「瑞」はめでたいとの意味で、夏になると蓮の花が満開し、とても綺麗な風景となります。「百坡亭」が長い廊下の形をして、池の中心部を跨いでますから、両方の景色を観賞出来る場所です。特に先程申しました枠からの景色について、ここから蘇先生を御覧になってください。まるで先生の像に一つ枠を付けているみたいです。この造園技術はいわゆる「框景」です。
碑亭の中に並んでいるのは殆ど蘇先生の親筆です。石刻が100位あり、楷書の作品が大部分です。先生は書道家としても名高く、代表作には「柳州碑」、「酔翁亭記」などがあります。これらの石碑は書法だけではなく、彫刻も優れており、かなり珍重な文物であります。
三蘇祠は地元の人には三蘇公園と呼ばれ、家族団欒の憩いの場所ともなっておりますが、今後名所古跡としてますます数多くの観光客を引き付けるでしょう。
入場料:30元