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都江堰

 成都から西へ58km離れた場所に都江堰市があります。都江堰は昔水利工事の名前だけでしたが、今は所在地の地名ともなりました。
 御存じの通り、四川省は「天府の国」(非常に自然に恵まれているという意味)と呼ばれておりますが、もし都江堰がなかったら今日の「天府の国」はなかったでしょう。この水利工事は秦の始皇帝がまだ中国を統一する以前の紀元前256年に着工したもので、ほぼ万里の長城建設と同じ時期です。
 それを紹介する前にまず岷江という長江の支流を説明しなければなりません。四川省北部の山地を源にした岷江が北から南へ流れ、宜賓という所で長江に合流する四川省西部一の河川で、農業灌漑、生活用水、工業生産などの面で、欠かせない重要な川となっています。その流れが都江堰市に入ったら玉壘山に妨げられ、増水期になると氾濫し、災害となった一方,東側にある成都平野へ流れている灌漑水不足が深刻になっており、農業発展の障害となってきました。
 そこで新しい水路を作り、岷江の余った水を平野に導入しようという水利工事の建設が日増しに迫ってきたことを背景に、李氷、二郎親子が指揮する水利事業が発足しました。
 水利事業は「宝瓶口」「魚嘴」「飛沙堰」の三つの部分からなります。最初に作ったのは「宝瓶口」です。李氷親子が施工現場を踏査してから、玉壘山を掘って、導入水路を作ろうとの方針を決めました。今の離堆公園がもともと玉壘山の一部で、山を掘ってから「石の堆」となったものです。「宝瓶口」が成都平野へ流れている水の入り口ともなっています。幅20m、高さ40m、長さ80mで、ボトルの口に似ていることから、「宝瓶口」と名付けました。
 現在の技術では簡単に出来ますが、2200年前には大変なことです。例えば、その時はまだ火薬が発明されておりません。山を掘ることも苦心しました。その方法として岩山の上で火を燃やし、水をかけ岩石を割り工事を進めたそうです。
今は「宝瓶口」に「伏龍観」があり、伝説によると李氷が水害を治める時、川の中から龍が出て邪魔したので、息子の李二郎が龍と戦い屈服させましたことを記念するために立てられたそうです。
 「宝瓶口」が出来上がって、水がうまく平野に入ると思われましたが、一つ問題が出てきました。つまり、岷江の東側、「宝瓶口」の河床が西側より高くて、水がなかなか新水路に入らないのです。「宝瓶口」の反対側に新しい施設を修築しないとならないことになりました。そこで、河の中に砂礫や玉砂利を積み上げる竹の籠を置いて、流れを分ける「魚嘴」、人工の島を作りました。河の中にある小島で、水が分流する所が魚の口の形をしていますから「魚嘴」と呼ばれたのです。それにより新水路に水が流れます。
 ここで岷江が二本に分かれますから岷江そのままの流れは外江、平野へ流れているのは内江と言われるようになりました。もちろん、外江側に水門を設け、その時の状況に応じて、それを開閉して水量を調節しております。さらに洪水を防ぐため「宝瓶口」と「魚嘴」との間に200mの「飛沙堰」を建設しました。それは水の排出路として、外江に通じています。要するに洪水時には外江に水を排出し、内江に砂礫が滞積しないようになりました。内江の流量を観測するため、李氷は人間の形をしている石「石人」というものを川の中に置き、水位が足から肩の間で保つよう指示しました。
 「都江堰」は秦代から今まで使用されており、現在その灌漑面積は約66万haで、成都平野のもっとも大切な水利システムとなっており、灌漑だけでなく、洪水防御、舟運、漂木などの面でも非常に重要な役割を果たしています。
 李氷親子を記念するため南北時代には玉壘山の麓に「崇徳祠」を建造し、李氷の石像を立てましたが、宋代には二人が「王」と授けられ、二郎の像を増築し、「崇徳祠」も「二王廟」となり、李氷親子が神様のように尊敬されてきました。そのほかに「深淘灘、低作堰」など工事を実施した時まとめたポイントが李氷親子の殿の屋根に彫刻してあり、毎年行われている都江堰の改修や整備の要となっているのです。
 「二王廟」の石段を下りて、岷江の西側から東側へ行くには「安瀾橋」という吊橋を渡ります。それも一つの見所となりました。「都江堰」が出来上がってから明代までにはそこに橋がなく、往来も舟で行っていたのです。しかし、川の流れが急なので、特に洪水の時によく舟の転覆事故がおこり、清代にそれを目にした私塾の先生、何先徳夫婦がお金を調達し、人を集めて、吊橋をつくりました。それを記念するために「安瀾橋」を夫婦橋ともいいます。「二王廟」から出て、その橋を揺れながら渡るのも楽しいことでしょう。
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